"HEROES"

ベルリンにて、歓びの讃歌

ジギー以来二度目の神憑りな領域へ到達したと絶賛される77年10月発表の『"Heroes"』は、前作『Low』からほんの9か月で発表するという異例のタイミングで、しかもそのアルバムが屈指の完成度を誇るのだからファンも批評家たちも驚愕した。ブライアン・イーノとロバート・フリップ、それにボウイというブリティッシュ・ロック界の最重要人物がベルリンに揃ったことも記念碑的作品の根拠となろう。

当時ボウイが傾倒していたドイツ表現主義の影響はジャケット写真のポーズや冒頭曲のタイトルなどからも見受けられるが、『"Heroes"』というアルバムは、電子音楽と人間心理が隣り合わせてどのように作用するかの実験だったともいえそうだ。無駄な装飾を一切削ぎ落として輪郭を際立たせる手法は、イーノのオブリーク・ストラテジーズ（行動や思考のゲーム化）の作用でもあるだろう。
アナログB面の4曲のインストゥルメンタル・ナンバーの美しさは当時も今も変わっていない。

オリジナル・リリース時のドイツとフランス盤はそれぞれご当地ヴァージョンのタイトル曲を収録していた。91年の再発CDにはボーナス・トラックとして2曲が追加収録されている。07年の紙ジャケ仕様のデジタル・リマスター盤には残念ながらボーナス・トラックは収録されていない。

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