DAVID BOWIE DISCOGRAPHY

ALADDIN SANE

ALADDIN SANE

  • side-A
  • 01. Watch That Man
  • 02. Aladdin Sane (1913-1938-197?)
  • 03. Drive-In Saturday
  • 04. Panic In Detroit
  • 05. Cracked Actor

  • side-B
  • 06. Time
  • 07. The Prettiest Star
  • 08. Let's Spend The Night Together
  • 09. The Jean Genie
  • 10. Lady Grinning Soul

気のふれた預言者

ORIGINAL LABEL

RCA

RS1001
LSP4852(US)

UK 1973 Original

初来日に一部のファッション関係者と洋楽ファンたちが騒然となっていた73年の4月13日、本国イギリスで文字どおり待望の新作アルバム『Aladdin Sane』が発売された。通算6枚目にして予約注文だけでチャートの首位を奪取する快挙を遂げ、最終的には5週連続で全英アルバム・チャートの1位を記録(全米17位)、グラム・ロックの化身ジギーの人気はここに頂点を極めた。だが、それは単にアルバムが売れただけの結果ではなく、イギリス全土とアメリカ、そして日本を過密なスケジュールで約1年以上の期間をかけて巡業したことの表れである。

ツアーでは疲労困憊の身体であっても新たに訪れた土地の空気から、ボウイはさまざまな音楽に還元される要素を吸収した。とくにはじめて本格的に乗り込んだアメリカの風土や文化は刺激とスリルに満ち溢れており、ボウイの興奮はアルバムのそこかしこに顕著だ。たとえばビバリーヒルズやサンセット・ブルーバードには退廃を嗅ぎとり、デトロイトやニューヨークでもキューブリックの描く世界ですら及ばぬ、暴力やドラッグが日常の荒廃した世界をリアルに感じ取った。

そして、アメリカとともにコンセプトに据えたのが、30thアニヴァーサリー・エディションのブックレットでも触れられているイーヴリン・ウォーの長編小説『Vile Bodies』である。マネージャーのデフリーズが仕掛ける戦略(大スターであるかのように仕立てる)にもとづいて、最高級ホテルでの派手な暮らしを続ける中で、ボウイは『Vile Bodies』の世界にイマジネイションを掻き立てたのではないだろうか。

最後に、言い古されている感もあるが、いくつかトリビアを紹介しておこう。タイトルは"A Lad In Vain"(空虚な若者)から"A Lad Insane"(狂気の若者)に、そして"A Land Insane"(狂気の国) などドラッグを思わせるいくつかの候補に二転三転し、最終的にパントマイムの神秘性や混乱した精神という意味も含んだ"Aladdin Sane"に落ち着いた。タイトル曲の副題(1913-1938-197?)は第一次、第二次大戦勃発のそれぞれ前年を指しており、最後はベトナム戦争から世界は破滅を辿るとの暗示だったという。アートワークに関しては、Pink Monkey Birdか狂気の若者か、とにかく独創的なピエール・ラロシュによるメイキャップに尽きる。額から頬にかけての稲妻は、ナショナルの炊飯器に見つけたマークがモチーフだと伝えられている。

84年には限定でピクチャー・ヴィニールが発売。その後もアナログでは何度か再発されている。
90年の再発版CDには『Aladdin Sane』のみボーナス・トラックが一曲も収録されていないので注意しよう。30周年記念盤は完全限定生産とはいえまだ市場に出回っているので、それを決定版としたい。紙ジャケのデジタル・リマスター盤はオリジナルのアートワークが再現されているので楽しめるだろう。

  • 30th Anniversary Edition Bonus Disc Track
  • 01. John, I'm Only Dancing (Sax Version)
  • 02. The Jean Genie (Original Single Mix)
  • 03. Time (US Single Edit)
  • 04. All The Young Dudes
  • 05. Changes (Live in Boston, 1 Oct 1972)
  • 06. The Supermen (Live in Boston, 1 Oct 1972)
  • 07. Life On Mars (Live In Boston, 1 Oct 1972)
  • 08. John, I’m Only Dancing (Live in Boston, 1 Oct 1972)
  • 09. The Jean Genie (Live in Santa Monica, 20 Oct 1972)
  • 10. Drive-In Saturday (Live in Cleveland, 25 Nov 1972)