THE RISE AND FALL OF ZIGGY STARDUST
AND THE SPIDERS FROM MARS

交響曲第8番、君の意志のままに

ボウイの代表作として広く知られる72年発表のトータル・コンセプト・アルバム。バイセクシャルを公言することで大衆の注目を集め、さらに宇宙からやってきたジギーに扮するという奇抜なアイデアで勝負をかけた。グラムロック華やかな当時のシーンと合わさり、爆発的なヒットを記録。今現在も高い評価を得ている。

プロデューサーは前作同様、ケン・スコット。ジギーをサポートするバンドもスパイダース・フロム・マースと銘打ってコンセプト・アルバムを演出 。
TV番組で「Starman」を歌う異星からやってきたヒーローに当時の若者の好奇心は釘付けとなり、同シングルはチャートを急上昇、全英11位まで駆け上がる。 グラムロックが何であったのかはこの際問題ではなく、過渡期にあったロックに批判精神をくすぐる虚像をボウイがほいと用意したまでのこと。

冒頭2曲をはじめ現実の形骸化した世界とでも言おうか、冷めきったストーリーテラーのボウイの姿が合わせ鏡に映り込む構造にどきりとさせられる。他にもマーク・ボランに捧げられた「Lady Stardust」、「Star」と「Hang On To Yourself」はたたみかけるようなロックンロール。極めつけはジギー隆盛から自己崩壊の顛末を描いた「Ziggy Stardust」。60年代アメリカの歌手ヴィンス・テイラーをモデルにしたという3分13秒のドラマは、シンプルなサウンドと溶け合い、音量とともに聞き手のイマジネーションまで増幅させる秀逸さである。
そして最後を飾る「Rock 'N' Roll Suicide」でアルバムの仕掛けが表明される。「ジギーの熱狂をご覧になっていただけただろう。こんなものでよければ僕はいつでも君等にくれてやる。」あまりにボウイらしいメッセージである。ロックという共同幻想の確信犯的捏造のドラマが『Ziggy Stardust』そのものといえまいか。

傑作と称されるだけにリイシューされた回数も群を抜いているが、各フォーマットについては簡易にまとめたい。80年代半ばにピクチャー・ヴィニールが限定発売され、ほかにも高音質なMFSL盤、レアなRCA盤CDなどがコレクターには人気となっている。
90年の再発版CDには5曲のボーナス・トラックが収録されていたが、02年にその5曲も含む豪華な30周年記念盤がリリースされたので、そちらが決定版となろうか。SACDや紙ジャケなどリイシューCDだけでもかなりの種類があるので、興味のある方はさらに詳しく調べられたし。

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