EARTHLING

モダニズム - 幾何学ブレイクビーツ

『Outside』は5枚ほどの連作だから次回も続編をリリースするよ、と公言しながら約1年半の短期間で届けられた新譜は、ドラムンベース/ジャングルのサウンドで構築された全く別軸で単発の『Earthling』だった。久々のワールド・ツアーとなった前回のOutsideツアーで得たエキサイティングな収穫を真空パックしたアルバムだとボウイは語った。アグレッシヴかつ王道の品格を湛えたデジタル・サウンドという新境地を歓迎する声もあるにはあったが、当時の精鋭プロディジーやケミカル・ブラザーズらを聴いているロック・キッズからは「若造りかよ、ボウイ爺さん」といった声を集めてしまい、話題になったものの評価は芳しくなかった。今では『Black Tie White Noise』と同様にブック・リサイクル大型店で在庫がかさんでいる。

シングル「Littl Wonder」（ジギーのクローンが登場）や「Dead Man Walking」のPVを手がけたのは、ゴシックな映像世界で高い評価を得ているフローリア・シジスモンディと 奇形のパペットの造型はトニー・アウスラー。両者映像の新鋭とのコラボレーションも『Earthling』の魅力のひとつで、もうひとつ詞作についてもW・S・バロウズの影響を読み取る楽しみがあり、さらに直伝のカットアップ技法以外にも著作へのオマージュなども見受けられる。ダンス・ミュージックに知的な冒険を加えるという意味では、非常にボウイらしい作品に仕上がっている。

初回限定盤は三方背ボックスにポスターが封入される特別仕様で、リミックスが1曲ボーナス・トラックに収録されていた。香港で発売された特別版には「Seven Years In Tibet」のマンダリン・ヴァージョンを収録したディスクが付属、韓国盤には「Under Pressure」がボーナス・トラックに追加収録されている。
04年にSonyより再発されたボーナス・トラック多数収録のデジパック仕様のディスクが、07年再発の紙ジャケのベースとなっており、多数のリミックス・ヴァージョンを聴くことができる。

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